自由貿易協定(FTA)締結の遅れは国益を損なう

 日本とメキシコ両政府の自由貿易協定(FTA)締結は、先月、農産物の関税を巡る両国の隔たりが大きく、交渉が決裂しました。FTAとは二国(地域)間で経済を自由化するための取り決めで、関税や制限的な通商規則を撤廃するものです。今後、メキシコ以上に農林水産品で譲歩を迫られる韓国、タイ、フィリピンなどアジア諸国とのFTA交渉の難航が懸念されます。

対メキシコ輸出の逸失利益は、年間4000億円
日本からメキシコへの輸出品には、平均16%の関税がかかりますが、NAFTA(米州)やEU(欧州)は既にメキシコとFTAを締結しているため関税がかかりません。その結果、日本企業は欧米企業に市場を奪われ、年間4000億円もの輸出利益を逸失しています。自動車や部品輸出に関しても、10〜30%の関税がかけられ、不利な競争条件を強いられている一方、EUの自動車輸出などは、FTA締結以前の5倍超、11万台に急増しました。交渉が決裂したままなら、完成車の関税は、来年1月1日から50%に引き上げられ、影響は一層深刻化します。

FTAが世界の潮流―大きく出遅れた日本
 貿易の自由化は、世界貿易機関(WTO)の多国間交渉がなかなか進展しない中、利害が一致した相手と迅速に協定を結べるFTAが世界の潮流になっており、世界の国や地域の間で151件(2003年5月現在)締結されています。その中で日本は、わずかにシンガポールと締結したに過ぎず、一方の欧米諸国は、域内や自国の利益を最大化するため、FTAを急ピッチで展開しています。  また、東アジアを舞台にしたFTA交渉では、タイと米国は来年初めにFTA交渉入りで合意、東アジアの盟主を狙う中国も東南アジア諸国連合(ASEAN)と2010年のFTA締結を目標に交渉に入りました。日本はメキシコに次いで韓国との政府間交渉にこぎつけたものの、先行組との格差は、広がっています。

貿易の自由化推進が日本経済を強くする
 相互に恩恵と妥協が必要なFTA交渉で、保護一辺倒の姿勢を崩さなければ、日本と二国間の自由貿易協定を結ぼうとする国は増えず、結果、関税等の障壁が国際競争において大きなハンディとなります。農業の自由化は、優位性がない生産分野で痛みを伴いますが、無駄な農業土木予算を削減した分で農家に一定期間、直接所得補償するなどの激変緩和策を講じ、同時に輸入制限や価格政策といった市場を歪める政策を排除し、市場原理の活用により農業の構造改革を急がなければなりません。  日本経済を強くし、国際競争で勝ち抜くためには、貿易の自由化を推進していくことが不可欠で、日本の国益をトータルで考えれば、FTAの締結を急ピッチで拡大し、その遅れを一刻も早く取り戻すことが求められます。



(9月中旬記)