小泉内閣の限界が露呈した「先送り国会」

 第百五十四通常国会が、先月末閉会した。マスコミでは、「疑惑国会」、「スキャンダル国会」などと表現しているが、見方を変えると、あらゆる面で中途半端な「先送り国会」であったと言える。
 まず、四つの重要法案であるが、その内、有事関連法案と個人情報保護法案は、継続審議、つまり先送りとなったが、そもそも法案自体が肝心な点を先送りにした、ずさんなものである。
 有事関連法案は、もともと、旧ソ連の侵攻が想定された冷戦時代に検討された内容であり、国の権限を強めることと自衛隊を行動しやすくすることだけに主眼が置かれている。テロや武装不審船対策といった新たな国際情勢に即した対応や国民の生命や財産を保護する法整備は、すっぽり抜け落ちている。
 個人情報保護法案も、国家(公務員)による個人情報の悪用について罰則がないなど、問題だらけの法案である。はからずも、防衛庁での情報公開請求者リスト作成問題が発覚し、心配が現実のものとなった。
 また、郵政改革関連法と医療制度改革関連法も、与党が強引に成立させてしまったが、内容的には重要な点を先送りしたままである。
 郵政改革関連法の中の信書便法では、民間に開放する範囲が明示されておらず、また官が実質的に民間事業者を規制できるようにしてある。ヤマト運輸が、参入にはメリットよりデメリットの方が大きいことを表明するなど、本格的な民間参入は望み薄である。
 さらに、医療制度改革法は、先送りの典型といえる。97年、当時厚生大臣であった首相は、医療制度の抜本改革の約束と引き換えに患者負担増を強いた。今回は、首相として指導力を発揮できたにもかかわらず、改正案は、目先の財政破綻を回避するための新たな負担増だけであり、抜本改革はすべて先送りされた。このままでは、数年後に同じ問題が生じることは必至である。
 このほかにも「政治とカネ」の問題にかかわる多くの課題も、先送りされた。与党は、政権維持構造や利権構造にメスを入れられることを恐れ、疑惑の真相解明には極めて消極的であった。また、首相が再発防止策として検討を指示した、政治家と官僚の接触制限、公共事業受注企業からの政治献金規制、与党による政府提出法案の事前審査制度廃止なども、ことごとく与党の反発に会い進展しなかった。わずかな成果は、「あっせん利得処罰法」が改正され、処罰対象に私設秘書も加えられたことぐらいだ。しかし、この法律もまだ大きな抜け道が残されている。それは、業者が口利きを依頼する「請託行為」の立証が必要であることだ。通常、口利き依頼は当事者が密室でかわすことが多く、自白がない限り立証は難しい。結局、法の実効性は期待できない。
 ことほど左様に、今国会はすべてが中途半端な「先送り国会」だった。経済運営も含め小泉内閣の限界が見えてきた。やはり、自民党を基盤とする内閣では改革は進まない。  政治がこんなことを繰り返していれば、政治決断の迅速さがますます求められる国際社会から取り残され、大きな国益を損なうことになってしまうのではないか。思い切った改革を断行するためには、政権交代しかないとの感をますます強くした。


※日刊自動車新聞「直さんの永田町Wクリック」
(8月10日掲載)