「請託」と「黙認」

 今国会は、次から次へと官僚や国会議員の不祥事・疑惑が発覚した。延長国会に入り、健保法改正案や郵政事業関連法案の陰に隠れて、あまり報道されないが、政・官・業の癒着に絡んだ事件の再発防止のための法整備も、今、与野党間での争点の一つとなっている。

その争点のキーワードは、「請託」と「黙認」である。「請託」とは、政治家を含む公務員が、業者から、他の公務員に対し一定の職務行為を行うことを「あっせん」するよう依頼を受けることである。また、「黙認」は、ここでは、入札に係る公務員が、談合情報が寄せられるなどで談合が行われることを知っていながら、それを防止するための措置を取らないことの意味である。

まず、「請託」は、「あっせん利得処罰法」の改正案で争点になっている。同法は、政治家(国会議員、地方議員)や秘書(今回の改正で私設秘書を加えることでは与野党が合意)が、業者の依頼を受けて(「請託」を受けて)、公務員に契約や許認可などを働きかける「あっせん」をした見返りに金品を受ける行為を処罰するものである。同様の行為は、刑法の「あっせん収賄罪」でも罰することはできるが、これは、広く公務員(含む政治家)を処罰対象にし、他の公務員に不正な行為をさせて対価を得ることが犯罪構成要件となっており、刑も重い。これに対し、「あっせん利得処罰法」は、度重なる政治家の汚職への批判から、特別に、処罰対象を政治家や秘書などの「政治公務員」に限定し、それらの者が、他の公務員に、不正な行為だけではなく、適正な行為をさせることも処罰対象として制定された。しかし、刑法の「あっせん収賄罪」と同様に、「請託を受けた」ことが犯罪の構成要件になっており、法制定当時から、実効性は疑問視されていた。「請託」のほとんどは、政治家や秘書が業者と密室で交わすことが多く、当事者が自白しない限り、請託があったことの立証は難しいからだ。

もう一つのキーワードである「黙認」は、「官製談合防止法案」で争点になる。与党は今国会に法案提出したが、民主党は既に昨年の臨時国会に提出している。

政治家や秘書のあっせん行為を一掃するためには、入札談合を厳しく取り締まるための法整備も欠かせない。現行は、談合を行った業者については、独占禁止法で処罰されるが、それに関与した公務員を処罰する法律がない。公務員が入札価格を漏らすことなどで談合に手を貸す、いわゆる「官製談合」を取り締まる法律が必要だ。

与党案では、公務員が談合に直接関与することだけを処罰の対象としているが、民主党案では、談合を未然に防止することが重要であるとの視点から、談合が行われる明白な恐れがあることを公務員が知りながら防止のための措置を取らず「黙認」することも、処罰の対象に加えるべきとしている。

政治腐敗の一掃と政治倫理の確立は、すべての国民が強く求めている喫緊の課題である。政府・与党は、これまで事件が表面化する都度、申し訳程度に「ざる法」でごまかしてきた。もはやこのような姿勢は許されない。今こそ、政治の信頼回復に向けた根本的な再発防止策の実行を決断しなければならない。


※日刊自動車新聞「直さんの永田町Wクリック」
(7月6日掲載)