「疑惑の花」より「景気の花」

 東京の桜の開花は、観測史上最も早かった。それに反し、国民が最も期待している「景気の花」は、いまだに、蕾らしきものがかすかに見える程度で、開花時期など全く判らない。皮肉なことに、その脇で、政治とカネにまつわる「疑惑の花」だけが、満開になっている。
 さて、経済情勢であるが、最近の統計を見ても、2月の完全失業率は、前月と同水準で改善せず、失業者数は11ヶ月連続で増加している。また、消費者物価も下落が続いている。つまり、雇用情勢の悪化が消費低迷に拍車をかけ、それがまたデフレにつながる悪循環は続いている。ただ、米国の生産が上向いたことを受け、我が国の生産にも下げ止まりの兆しが見られ、在庫率も低下するなど、一部には景気の下支えにつながる兆しも見えなくはない。しかし、デフレ状態や不良債権問題を解決しない限り、本格的な景気回復にはつながらないだろう。
 今月末には小泉内閣が発足して1年を迎えるが、依然として、このような経済状況から脱却できないのは、経済に対する認識が甘く、政策対応が後手後手に回ってきたからである。
 政府が、我が国経済のデフレ状態を認定したのは昨年3月の月例経済報告においてであるが、その後、1年近く経ってやっと、デフレの進行は景気悪化を加速するとの認識に至り、急遽、デフレ対策をまとめたというのが実態である。また、その対策の中身も、この1年余り、本格的な経済構造改革がほとんど進展していないことから、結局、対策といっても従来から言われている不良債権処理の促進、金融システムの安定などといった、お題目の繰り返しに終わっている。
 私は、3月の予算委員会で、首相が始めた経済改革は何かと尋ねたが、首相は、郵便事業への民間参入や道路公団をはじめとした特殊法人等の改革を挙げ、これらは経済改革だと強弁した。また、経済への認識の甘さと対応の遅れについては、手術や薬が良くても傷を治すには時間がかかる、などと悠長な答弁をするだけであった。もちろん、特殊法人改革も必要だが、これは根本的な改革で一朝一夕にはできない。それを進めながら同時に、直接的に足元の経済を改善する政策が必要なことは論を待たない。まさしく、デフレ対策は時間との競争である。小泉政権の経済政策を見ていると、走れど走れど追いつかない“ドッグレース”のようで、苛立ちさえ感じる。
 3月危機を乗り切ったことで、危機意識が後退し、経済政策の手が緩むことが懸念される。日本経済が抱える構造的な問題は何一つ解決されていないのだから、銀行の不良債権処理や企業の債務処理のスピードアップを図るとともに、投資促進や需要喚起に対してインパクトのある施策を強力に推進すべきである。例えば、投資促進では、米国で導入されている、減価償却を短期間で進められる加速度償却制度の導入、需要喚起のためには、経済波及効果 の大きい住宅や自動車分野での減税措置などを提案したい。また、構造改革の本格化に伴って発生する痛みに万全に対応できる雇用対策を手当てしておくことも重要だ。
 「疑惑の花」は一刻も早くきっぱりと散らし、美しい「景気の花」を満開にしたいものだ。

日刊自動車新聞「直さんの永田町Wクリック」
(4月13日掲載)